1988 年 77 巻 1 号 p. 26-33
Chronic idiopathic intestinal pseudoobstruction (CIIP)の2症例を報告した.症例1は32才女性.過去2度腸閉塞の疑いで開腹を受けるも器質的異常なく,術後多発腸穿孔にて広範腸切除を行った.以後も悪心,嘔吐は変わらず持続.症例2は35才女性.脂肪性下痢,腹部膨満を訴え腸閉塞の疑いで開腹を受けたが器質的異常はなかった.両症例とも腹部X線像では鏡面形成をみた.食道内圧検査では自発性収縮の出現, LESP低値,嚥下時収縮の低下を,さらにレノグラムにおいて腎排泄相の著しい遅延を認めた.なお, total parenteral nutrition (以下TPN)にて両者とも栄養状態は改善した.本邦でのCIIPの報告は11例で内7例が成人発症,腸管の他食道と尿路系に異常を認めたのは自験の2症例のみであった.