日本内科学会雑誌
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精巣動脈組織学的所見により確定診断しえた多発動脈炎の1例
松原 渉今村 陽一原田 篤実村上 一雄梶山 憲治松本 勲岩下 明徳
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1988 年 77 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

今回,私どもは発熱を主訴として入院し,血液学的検査,細菌学的検査,画像検査などにより確診にいたらず,精巣動脈組織像にてフィブリノイド壊死を伴う血管全層炎を認めたことから多発動脈炎と診断しえた70才,男性の症例を経験した.本例は入院時,蛋白尿と血尿を認めたため腎生検を施行し,半月体形成性腎炎の合併を認めたが,血管炎の所見はみあたらなかった.確診後,副腎皮質ステロイド薬の投与により臨床所見および腎生検組織像の改善が認められた.多発動脈炎は特異的な臨床所見に乏しく,病理所見からも診断が困難な場合が多いが,本例は精巣動脈病理所見より確定診断できた点で貴重な症例と考えられた.

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