1988 年 77 巻 9 号 p. 1404-1409
患者は, 37才男性.昭和56年12月乳房腫脹に気付くが放置. 57年10月下旬,上腹部痛のため来院.肝腫瘤・胸部多発腫瘤陰影を認め入院.血清hCGが32万mlU/mlと異常高値で,超音波下経皮肺生検で絨毛癌を示唆する所見を得たため, MTXとアクチノマイシンDを使用し一時的な効果を認めた.全身転移の増強で, 58年2月死亡.剖検では,原発巣は左肺上葉腫瘍と思われ,詳細な検索でも睾丸・縦隔・松果体・胃に原発を思わせる所見は認めず.組織酵素抗体法で腫瘍細胞内にhCGの局在を証明した.肺原発男性絨毛癌は極めてまれで,本邦海外を合わせ計6例の記載があるにすぎない.併せて本邦の性腺外原発男性絨毛癌の統計と考察も報告した.