1988 年 77 巻 9 号 p. 1421-1427
肺小細胞癌に合併したネフローゼ症候群の1例を経験したので報告する.症例は74才男性で昭和59年8月,ネフローゼ症候群と診断され慶応義塾大学病院内科に入院した.胸部X線像上異常陰影を認め,喀痰細胞診で肺小細胞癌(燕麦細胞型)と診断された.肺小細胞癌に対し化学療法を施行したところ,腫瘍陰影の消失に伴いネフローゼ症候群は完全寛解した.腎生検所見は光顕,電顕,蛍光ともに膜性腎炎に一致するものであった.過去20年間に肺小細胞癌にネフローゼ症候群が合併した報告例は6例で,治療により寛解した例はそのうち2例であった.経過より本症例のネフローゼ症候群の発生機序に肺小細胞癌が関与していたことが示唆された.