1989 年 78 巻 4 号 p. 557-560
3年前より労作時の胸部圧迫感・息切れを自覚し,心雑音・心電図異常も指摘されていた62才,男性が,急性左心不全のため入院した.心尖部に全収縮期雑音を聴取し,心エコーにて非対称性中隔肥大,僧帽弁弁尖の接合不全および後尖の左房内への反転を認め,後尖腱索断裂による急性僧帽弁閉鎖不全と診断した.心不全の内科治療の後,僧帽弁置換術を行い,後尖内側の一次腱索に断裂を認め,組織学的には粘液変性像がみられた.また左室心筋には軽度の錯綜配列および核の大小不同を認めた.肥大型心筋症において,僧帽弁腱索断裂に伴う急性僧帽弁閉鎖不全の報告はみられないため考察とともに報告する.