1989 年 78 巻 7 号 p. 934-938
症例は52才の男性.昭和56年心臟カテーテル検査にて修正大血管転位症と診断された.昭和63年4月心電図にて完全房室ブロックを指摘され, 5月20日心内膜電極ペースメーカー植え込みを施行した.術中,術後合併症もなく順調に経過した.本疾患では心室の逆位を伴い,その解剖学的特性のために心内膜電極の固定は困難と考えられ,従来心筋電極が用いられてきた.しかし,心筋電極ペースメーカーの植え込みには全身麻酔が必要で患者の負担も大きく,合併症も心内膜電極の場合より2~3倍多いとされる.本邦ではこれまでに本症患者に心内膜電極ペースメーカーの植え込みを行った報告はなく,極めてまれな症例と考え報告した.