1991 年 80 巻 4 号 p. 634-640
血球産生の調節に必要な造血因子は遺伝子クローニングの結果,十数種類に整理され,その生物活性もよく調べられている.造血因子の標的となる造血幹細胞も濃縮,単離され,併せて造血幹細胞類似の株細胞も利用し,そこに表現される各因子のレセプターについての研究が急速に進んでいる.造血因子やサイトカインのレセプターは遺伝子クローニングの結果,それらの多くに類似の構造が見つかりサイトカインレセプターファミリーという言葉が生れた.これらのレセプターはチロシンキナーゼ活性を持たず細胞外部分に共通のアミノ酸配列がある.レセプターに付着した造血因子が核に達し作用を発現するまでの情報伝達機構が研究され始め,多くの因子でレセプターの作用を伝達するに必要な別の分子が見つかりつつある.これらの基礎的検討を基礎にして今後の臨床応用の発展が期待される.