抄録
ネフローゼ症候群にかんする二つの問題を取り上げた.ひとつは合併症としての高脂血症である.ネフローゼ症候群において, LDL増加を主体とする高脂血症が腎障害を悪化する可能性や,持続する高脂血症が粥状硬化症をきたす可能性について大きな関心が寄せられている.これらについての知見を整理した.動物実験では高脂血症による腎障害を発生させることはできるがヒトには簡単に当てはめられない.粥状硬化発生についてもデータ不足である.もうひとつはネフローゼ症候群の治療,特に蛋白摂取量の問題を取り上げた. Brenner一派により提唱された『蛋白の無制限な摂取による糸球体過剰〓過が糸球体硬化を生じる』との仮説は,少なくともネフローゼ症候群でこれまで常識とされてきた高蛋白摂取を改めて見直すひとつの根拠になった.短期の臨床検討ではむしろ低蛋白摂取の方がメジットが大きいようであるが,長期にわたる本格的な臨床的検討が必要である.