1993 年 82 巻 6 号 p. 916-921
肺血管内マクロファージ(PIMs)は肺毛細血管内に常時存在するマクロファージで,その分布には種差があり,羊,牛などの反芻動物や豚などに多く存在する.羊では肺毛細血管容積の15%をも占めている.一方,ラット,犬,兎などではほとんど存在しない.人については不明であるが,確認したとする報告がある.敗血症(エンドトキシン血症)や静脈内異物では豊富な貪食と種々のメディエーターを放出し,同時に起こる肺損傷の病態に大きく関与している.また,老廃赤血球の処理機構としての働きも持つ. PIMsがほとんど存在しない動物でもある条件下でPIMsが誘導されることが報告されている.これまでの研究からPIMsの生理的役割が明らかにされ,動物を用いたARDS実験モデルから得られた病態のより正確な把握が出来るようになった.