1994 年 83 巻 12 号 p. 2110-2116
ADH分泌異常症候群(SIADH)とは, ADHの分泌がその生理的調節機構を逸脱して生ずるため, ADH依存性の希釈性低Na血症をきたす病態をいう.原因としては異所性ADH産生腫瘍,中枢性疾患,肺疾患,薬物および内分泌異常によるものが多い.本症の臨床症状は希釈性低Na血症による脳浮腫で意識障害,嘔吐等の水中毒症状を示す.治療は水制限等の自由水の減少が有効であるが,急激な血清Na濃度の上昇は橋中央ミエリン溶解といわれる中枢神経系の障害をきたす.