日本内科学会雑誌
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病原大腸菌(下痢原性大腸菌)による下痢発症の分子機構
唐澤 忠宏倉園 久生竹田 美文
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1994 年 83 巻 7 号 p. 1212-1216

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抄録

下痢を起こす大腸菌(下痢原性大腸菌)は,一括して病原(性)大腸菌と呼称されているが,病原性大腸菌,細胞侵入性大腸菌,毒素原性大腸菌,腸管出血性大腸菌,腸管粘着性大腸菌の5群に分類されていて,それぞれの群に属する下痢原性大腸菌の下痢発症機構は全く異なる.毒素原性大腸菌は,易熱性エンテロトキシンと耐熱性エンテロトキシンの2種類のエンテロトキシンを産生し,これが腸管上皮細胞の細胞内情報伝達系を介して水様性下痢を起こす.腸管出血性大腸菌は,細胞毒性を持っVero毒素(志賀毒素様毒素)を産生し,毒素が腸管粘膜組織に傷害を与えて,血性下痢を起こす.細胞侵入性大腸菌は赤痢菌と同様,腸管粘膜組織に侵入・拡散し,組織を破壊して血性下痢を起こす.病原性大腸菌と腸管粘着性大腸菌の下痢発症機構はまだ十分にわかっていないが,最近の研究によれば,病原性大腸菌の下痢発症に細胞内情報伝達系が関与している可能性がある.

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