1997 年 86 巻 11 号 p. 2081-2087
1980年代中頃からヨーロッパで,次いで米国を中心にExtended-spectrum β-lactamase (ESBL)を産生する肺炎桿菌や大腸菌による院内感染症が流行し問題となっている.最近ではわが国においてもESBL産生菌が分離されるようになり,その危険性が問題視されている.しかし,細菌学的立場からすると, ESBL産生菌感染症を治療しうる抗菌薬があり,それらを適正に使用すれば特に恐い感染症というわけではない.流行の背景には, ESBL産生菌を的確に検出できないために適切な抗菌薬の選択が行われなかったことがあると思われる.ここではその診断を中心にESBL産生菌感染症を解説した.