日本内科学会雑誌
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造影剤による腎障害
鈴木 洋通
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1998 年 87 巻 11 号 p. 2343-2348

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抄録

造影剤による腎障害は現在病院で発症する急性腎不全の最も多い原因のひとつにあげられている.近年従来のイオン性造影剤にかわり浸透圧の低い非イオン性の造影剤が開発され,腎機能が正常や糖尿病を有しない場合には腎障害がおこりにくくなった.しかし,腎機能が低下している,あるいは糖尿病を合併している患者では腎障害の発症は依然減少していない.さらに,糖尿病性腎症では非イオン性造影剤といえども高率に腎障害を起こすことが報告されている.非イオン性造影剤で何故腎障害が発症するかについてはまだ決定的な証拠は見つかっていない.血行動態を介してあるいは尿細管への直接障害によるとされている.すなわち,造影剤は腎血流量を低下させ,その結果糸球体濾過量を減少させる.一方,尿細管への直接障害ではカルシウムが関与しているとされている.この造影剤による腎障害をいかに阻止するかについてはいくつかの試みがなされているがその中でもカルシウム拮抗薬やアデノシン受容体拮抗薬を前投与すると腎障害を予防できる可能性が報告されている.

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