日本内科学会雑誌
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患者の心理社会的背景への配慮: Narrative Based Medicine
斎藤 清二
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2003 年 92 巻 10 号 p. 2053-2058

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抄録

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.

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