日本内科学会雑誌
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慢性骨髄性白血病における分子標的療法
大野 竜三
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2003 年 92 巻 5 号 p. 884-889

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抄録

がんは遺伝子の異常によって発生する病気である.すべての病気に共通して言えることであるが,病因そのものに対する治療法はもっとも望ましく,そして副作用も少ないことが予測される,がんの薬物療法も同様であり,がんの病因そのものに作用する薬剤が望まれていた.メシル酸イマチニブ(STI571)は,慢性骨髄性白血病の原因となっている遺伝子異常の産物BCR/ABL蛋白に特異的に働くチロシン・キナーゼ阻害薬であり,この白血病のがん化の原因となっている分子に働くことより,理論どおりの効果を示すとともに,副作用も少ないことが判った.第一相試験では最大耐用量に到達する以前に十分な効果が得られ,第二相試験では90%以上の血液学的完全寛解と60%以上の白血病細胞が減少・消失する細胞遺伝学的効果が得られている.このようながん化の原因となっている分子に作用する分子標的療法は,がん治療のパラダイムを変える画期的な治療法であり,今世紀で目指すべきがん治療法と言える.

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