日本内科学会雑誌
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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の最近の話題
西原 利治大西 三朗円山 英昭
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2003 年 92 巻 6 号 p. 1104-1109

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抄録

食生活の変化に伴う肥満人口の増竣と共に,高度の脂肪肝に肝実質の炎疲・壊死,線維化所見が加わつた非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の増加が注目されている.本症はウイルス性肝疾患,自己免疫性肝疾患,既知の先天性代謝性肝疾患を除外した原因不明の慢性肝障害であり,飲酒歴に乏しいのに組織像はアルコール性肝障害に類似するのが特徴である.肥満や糖尿病,高脂血症を基礎疾患として有する場合には,発症頻度が増加するため生活習慣病の側面も有する.本症は遣伝的素因を背景に,脂肪肝とインスリン抵抗性を基礎病態として発症する症候群であり,しばしば肝硬変に進展し,米国では肝細胞癌の温床のーつとまでみなされている.予後良好との先人観が強い脂肪肝や高脂血症・糖尿病を準備状態とするため,日常診療において本症は看過されることが多いと懸念される.飽食の時代を迎えた今日, NASHの疾患概念の普及による早期発見と治療が求められる.

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