日本内科学会雑誌
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抗リン脂質抗体症候群
保田 晋助小池 隆夫
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2004 年 93 巻 10 号 p. 2216-2222

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抄録

抗リン脂質抗体症候群とは,免疫学的検査あるいは凝固学的検査によって抗リン脂質抗体が検出され,動静脈血栓症または妊娠合併症を生ずる疾患である. Sapporo Criteria (1998)により診断するが,血小板減少や溶血性貧血,重症型の劇症型抗リン脂質抗体症候群など多彩な症状を呈す.抗リン脂質抗体は実際にはリン脂質上のリン脂質結合蛋白を認識しており,その代表的なものがβ2-グリコプロテインIとプロトロンビンである.抗リン脂質抗体が血栓症を引き起こす原因は明らかになっていないが,凝固異常の他に動脈硬化の促進や,血管内皮細胞の活性化などが考えられている.治療については,低用量アスピリンに加え,動脈血栓に対しては抗血小板剤,静脈血栓に対してはワーファリン,習慣流産にはヘパリンが主に用いられる.病態究明,診断技術の確立,また新しい治療法の開発も積極的に行われている.

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