日本内科学会雑誌
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脂肪肝から肝がんへ…動物モデルから見たNASHの新展開
堀江 泰夫鈴木 聡片岡 英後藤 隆芳野 竜太郎佐藤 亘渡辺 純夫
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2005 年 94 巻 5 号 p. 990-998

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抄録

飲酒歴がほとんどないにもかかわらずアルコール性肝障害と組織学的に類似する非アルコール性脂肪性肝炎NASH (non-alcoholic steatohepatitis)は,欧米型の食生活の定着に伴い本邦においても増加することが予想され,肝硬変や肝癌への進行がみられることから,近年注目を集めている.その初期病変である肝細胞への脂肪の蓄積は,脂肪肝を有する遺伝子変異マウスの解析からさまざまなメカニズムによって引き起こされることが解明されつつある,これに対して, NASHの炎症や線維化,癌発症のメカニズムはまだ十分には明らかにされていない.しかし,我々が世界に先駆けて作成した癌抑制遺伝子Ptenの肝細胞特異的欠損マウスなどヒトNASHの肝病変を再現している遺伝子変異マウスが作成され,炎症や癌化にはperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)の発現亢進に基づく酸化ストレスの増加をはじめ, Akt, MAPKなどの活性化が関写していることが示唆された.今後, NASHの肝病変を忠実に再現する遺伝子変異マウスが作成されることにより,その病態が明らかにされ,近い将来効果的な治療法が開発されることが期待される.

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