農研機構研究報告
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原著論文
カンキツ新品種‘あすみ’
喜多 正幸 根角 博久吉岡 照高國賀 武太田 智濱田 宏子瀧下 文孝野々村 睦子吉田 俊雄
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キーワード: カンキツ, 新品種, 育種, 高糖度
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2022 年 2022 巻 12 号 p. 1-

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抄録

‘あすみ’は1992 年にオレンジタイプのカンキツ興津46 号(‘スイートスプリング’בトロビタ’オレンジ)を種子親とし,‘はるみ’(‘清見’×ポンカンF-2432)を花粉親として作出した品種である.2003 年よりカンキツ第9 回果樹系統適応性・特性検定試験に系統名カンキツ興津58 号として供試した.同試験には公設試験研究機関28 ヶ所および農研機構2 か所(カンキツ研究興津拠点,カンキツ研究口之津拠点)が参加し,その結果,2011 年に新品種候補としてふさわしいとの合意が得られ,種苗法に基づき,2014 年9 月30 日付けで第23723 号として品種登録された. 系統適応性検定試験および特性検定試験の結果では,本品種の樹勢は中程度で,樹姿は開張性と直立性の中間となる.枝梢からは長いトゲが発生する.葉は紡錘形である.かいよう病には弱く,そうか病には強い.隔年結果性は中程度,果実の後期落果はほとんどない.カンキツトリステザウイルス(CTV)によるステムピッティングの発生は中程度である.果実は170 g 程度で,扁平形である.果皮は橙色であり,果面は滑らかである.果皮厚は2.3 mm 程度で薄く,剥皮はやや難しい.果汁の糖度は15% 程度と非常に高く,酸度は1.15 g/100 mL 程度になる.含核数は平均1.5 粒程度と少ない. 成熟期および収穫期が2 月上旬を中心とした時期となるため,これまでの中晩生カンキツ栽培で,冬季の低温で特に甚大な被害を受けたことがない温暖な地帯での栽培が望ましい.また,かいよう病に弱いため施設栽培を推奨する.露地栽培では風当たりが強くない園地を選び,防風垣の設置が望まれる.

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