教育方法学研究
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原著論文
社会的公正をめざす音楽授業と教師の役割
米国の音楽教育における子どもの民族的多様性をめぐる論考を通して
磯田 三津子
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2016 年 41 巻 p. 25-35

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抄録

 本論の目的は,民族的マイノリティが多く在籍する米国の学校の音楽授業を対象に,社会的公正という観点から教師の役割について明らかにすることである。上述した目的を明らかにするために,本論は,次の三つの手続きにしたがって,論を進めた。第一は,音楽教育における社会的公正の考え方について整理することである。第二は,民族的マイノリティの子どもたちに対して,教師がどのような役割を担うべきであるのかについて,ゲイ(Gay, 2010)の考え方に基づいて検討することである。第三は,民族的マイノリティのための音楽教育の在り方について特集した2012年のMusic Educators Journal 誌に掲載された文献を中心に社会的公正をめざす音楽授業における教師の役割を明らかにすることである。

 社会的公正という観点に基づく教師の役割は次の2点である。第一は,子どもの民族についての理解を深め,彼らの音楽や文化を取り入れた音楽授業を行うことである。子どもたちが親しんでいる音楽を教材とすることは,彼らのアイデンティティを尊重し,学校と子どもたちの間にある文化的対立を縮小することによって音楽授業へ参加しやすい環境を創造することができる。第二は,子どもたちが差別や偏見という観点から音楽の中にある課題について考え,自らの状況を公正に改革することのできる知識や技能を育成することのできる授業実践を創造することである。

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