教育方法学研究
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原著論文
教科・活動・能力のトリレンマ
―能力表・要素表と北条小学校を中心に―
金馬 国晴
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2016 年 41 巻 p. 61-72

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抄録

 本稿では,教科と活動,能力の間のトリレンマの解決策を,各校のカリキュラムの全体構成にまで視野を広げつつ探る。その際,戦後初期の新教育のうち,コア・カリキュラムを手がかりとして,その問題解決に資するような当時の実際と可能性を考察する。具体的な手がかりは,能力表または要素表などといわれるものである。

 本稿では,(1)能力表・要素表について,各校に共通に見られた「構造」をまとめ,(2)これらの表が実際どのように実践化されるかを想定しながら「構成」されたのかと,(3)教科・活動・能力の鼎立がいかなる形で可能となるかについて,館山市立北条小学校を中心的な例として考察する。

 以下が明らかとなった。社会科に導入した活動が膨張する過程で,他の教科が包摂されていった(コア・カリキュラム)。教科の「構造」が変化したものの,同時に,教科の内容(知識,技能など)を教える機会は一層重視された。能力は当初,教科ごとに分けられたが,次第に活動全体を通じた教科横断的なものへと捉え直され,要素表に列挙された。

 北条小のような学校では,教科の構造が,要素表からイメージされるような単なる要素の羅列ではなく,活動において「活用」される道具として扱われた。他方で,能力別グルーピングやテストも教科ごとに行われた。

 教科,活動,能力の間に様々な矛盾が見られたものの,活動とそこで養われる能力がまず全体として捉えられ,実際は能力を各教科の要素ごとに分けながらも,どの場面でも必要に応じて養うことを意図し,定着したかを評価までするという一連のサイクルがつくられたのである。

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