抄録
本講義では、理論生物物理学とは何か、他の物理学分野とどのように異なるのかを出発点とし、生命システムを「多階層の安定性を持つ系」として位置づける。生命システムは、取り得る状態があまりにも膨大であるため、進化の過程で安定な状態の探索をする際に、それまでの履歴に依存せざるを得ない。これが、生命システムに多様性が生まれる一つの要因になっている。しかし、その多様性にも関わらず、多階層での安定性の要請という強い制約がかかり、そこに普遍性が生じることが期待される。実際に、適応システムや代謝システムなどを例として、生命システムの物理において普遍性を調べるという理論的アプローチが有効であることを紹介する。