名古屋文理大学紀要
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80年代・90年代に於ける家計貯蓄行動の変化と金融自由化の影響
関川 靖
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2002 年 2 巻 p. 23-33

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抄録

金利の自由化が完了して6年近く経過し,そして業務分野規制も持株会社の形態でもって異種業務への参入が可能となって緩和され,金融自由化はほぼ最終段階を迎えた.この金融自由化は,資金の効率的配分というマクロ面のメリットばかりでなく,家計の資産選択肢増加による最適ポートフォリオの形成や高金利商品開発による資産効果が働き,家計貯蓄の増加というミクロ面のメリットもあると考えられる.しかし,バブル崩壊後,低金利時代を迎え,金利面での効果が現れにくい経済状況となったが,この低金利要因だけで金融自由化のメリットがもたらされていないわけではない.金融自由化のメリットが現れない理由としては,政府のリーダーシップに拘る態度や,金融自由化の推進策の過ちによるモラルハザード発生,および政府庇護による金融機関の旧態依然とした経営体質が金融機関の破綻というデメリットをもたらしたためである.本論文は,家計の貯蓄行動の変化を80年代と90年代を通して分析し,「政策の失敗」を指摘すると共に真の意味で貯蓄者に利益をもたらす金融自由化を推進するために何をすべきかを提示することを目的とする.

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© 2002 名古屋文理大学
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