日本年金学会誌
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受給資格期間短縮が低所得高齢者に与えた影響
山田 篤裕
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2021 年 40 巻 p. 4-14

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抄録

 本稿では厚生労働省「老齢年金受給者実態調査(2017年)」の個票を用い、老齢年金受給のための受給資格期間が25年から10年へ短縮(2017年8月1日施行)されたことに伴い、(1)どれほどの低所得高齢者が貧困リスクを回避できたか、(2)貧困者で受給資格期間短縮に該当した者の生活保護受給率は高いのか、(3)年金に置き換えられた生活保護費はどれくらいの規模だったか、の3点を分析した。  主な知見として、(1)受給資格期間短縮該当で貧困であった者の中、2割前後が貧困から脱出できたこと、(2)他法優先の結果、それまで年金受給資格のなかった被保護高齢者の3割が年金受給資格を得たが、年金を受給しても生活保護脱却に至らない者が多かったため、受給資格期間短縮該当者の生活保護受給率は高いこと、(3)受給資格期間短縮によって新たに受給する老齢年金によって置き換えられた生活保護費は年額ベースで711億円ないし779億円で、高齢世帯が受給している生活扶助総額の1割にも及びその効果は将来も持続していくと考えられること、の3点が明らかになった。社会保障制度全体からみた政策含意として受給資格期間短縮は、25年以上保険料を拠出することへのインセンティブを弱める懸念があるとはいえ、生活保護受給者を含め、拠出した保険料に応じた給付という、社会保険の性格が貫徹される範囲をより広げたと評価できる。

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