年金研究
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論文(査読あり)
欧州を参考にした年金資金による サステイナブル投資の促進方策に関する研究
福山 圭一小野 暁史長野 誠治
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 1 巻 p. 32-69

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抄録

 日本のサステイナブル投資の市場規模は大幅な過少計上、欧州のそれは大幅な過大計上の可能性がある。欧州におけるサステイナブル投資拡大の主役は、年金基金などアセット・オーナーではなく、運用会社などアセット・マネジャーの側のようである。フランスでは労働組合の影響が強い。スウェーデンでは、株主に企業行動を正す責任があるという社会通念が発達している。イギリスでは度重なる企業不祥事に対する防止の役割が機関投資家にも期待された。また、EU や各国政府の積極的な取組みも背景にある。ただし、欧州全体として一律にサステイナブル投資が活発なわけではない。

 サステイナブル投資といっても、各国間で内容や重点の置き方は違っている。日本は日本の直面する課題に取り組むことで、真の意味でサステイナブル投資を定着、発展させることができる。日本では世界に類を見ない少子高齢化の進行という課題がある。このため、若者の雇用対策の促進、女性や高齢者の活用を図っていく必要がある。投資先の各企業に労働参加の受け入れ条件整備を促進することを年金資金運用の投資政策において明確にし、その観点から各運用会社を評価することを提案する。このような取り組みを行っていくことについては、訪問先の各機関からも総じて肯定的な反応を得た。

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© 2015 福山圭一
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