年金研究
Online ISSN : 2189-969X
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祖父母による保育の利用可能性と保育所による保育 の利用可能性が母親の就業に与える影響
平河 茉璃絵
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2018 年 10 巻 p. 53-67

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抄録

母親が就業継続をすることで高齢期に受け取ることのできる年金支給額を増やす可能性が大きいが、そのためには出産・育児期にも就業を継続できるような環境作りが必要である。従来の研究では、保育所と母親の就業に関する研究は豊富であるが、祖父母による保育については祖父母との同居の有無に着目することが多かった。しかし、祖父母による保育を考慮する上では祖父母との近居に着目することも重要である。本稿では祖父母による保育の利用可能性を祖父母と同居・近居していることと捉え、「くらしと仕事に関する調査(Longitudinal Survey of Employment and Fertility ; LOSEF)」の個票データを用いて保育所による保育の利用可能性と祖父母による保育の利用可能性が母親の就業に与える影響を実証分析した。保育所による保育の利用可能性の指標として各市区町村の05歳人口に対する各市区町村の保育所定員数の比率と全国の保育所定員数に対する各市区町村の保育所定員数の比率という2つの指標を用いて分析した結果、全国の保育所定員数に対する各市区町村の保育所定員数の比率は、母親の就業確率を有意に上昇させることが明らかとなった。また、どちらの保育所による保育の利用可能性の指標を用いても、祖父母との近居は母親の就業確率を有意に上昇させる。このことは、祖父母宅から近くに住むことは祖父母による保育を分析する上で重要であることを示唆している。さらに、祖父母との同居は母親の就業確率に対して正の効果があるものの、有意ではない。このことは、祖父母との同居が母親の就業に与える効果は、祖父母宅から遠方に住んでいる場合の母親の就業に与える効果と変わらないことを示唆している。

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© 平河茉璃絵
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