年金研究
Online ISSN : 2189-969X
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特集:中年独身者(40~64歳)の老後生活設計
中年未婚者の就業と生活リスク
-キャリア形成・転職・能力開発に注目して-
大風 薫
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2021 年 15 巻 p. 17-51

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抄録

 本稿では、現在就業する40代・50代の未婚男女を対象に、経済状態に深く関わる就業に着目してキャリア形成、転職、能力開発の現状を確認し、それらと収入・資産との関わりを明らかにした。得られた結果は以下のとおりである。

1) 中年未婚者の就業について、現職の従業上の地位は初職の従業上の地位と関係するが、男女で関係の仕方は異なり、女性は男性よりも不利な就業状況が維持されやすい。

2) 男女ともに現職およびキャリアの中心が正社員である場合に収入の水準や資産額は高く、特にその効果は男性で顕著である。また男女ともに現職およびキャリアの中心が非正社員である場合には、収入・資産ともに不利な状況に陥りやすく、生活費の1か月分の資産を保有していない人が男性で約30%、女性で約25%となっている。

3) 男女ともに転職経験がなく初職を継続している者は収入・資産が多いが、転職を経験するほど収入も資産も低下する。男性では3回以上の転職でより大きく収入も資産も低下し、女性では1回以上の転職でより大きく収入も資産も減少する。

4) 男女ともに能力開発を行っていると収入・資産が多い。男性では職場の制度を利用した能力開発が収入や資産の水準を高め、女性では職場の制度を利用したものと自発的な能力開発の双方を行っていると収入や資産が多い。

5) 資産形成手段は、男女ともに貯蓄のみの割合が多いが、男性は女性よりもリスク性資産を選択する傾向がある。男女ともに資産形成を何もおこなっていない割合は約3割である。男女ともに学歴の高さ、仕事の収入の多さ、能力開発、父親・母親からの経済支援へ期待できることは、資産形成手段を多様化させる。

 本研究では、転職や能力開発が収入の水準だけではなく、資産額や資産形成の多様性と関係することを明らかにできた。結婚制度による経済的なメリットの恩恵を受けられない未婚男女が増加する中において、自律的で持続的な生活設計や能力開発を行えるような社会的な支援を検討する必要がある。

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© 大風 薫
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