2022 年 19 巻 p. 314-380
本稿では、35~74歳の第2号被保険者の男女と第3号被保険者の女性を対象にして実施した「第7回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の結果を、男女別及び年齢階層別に比較した。得られた主たる知見は、次のとおりである。
第1に生きがいとは「生きる喜びや満足感」「心の安らぎや気晴らし」「生活の活力やはりあい」であると考える人が多い。そのような生きがいを持つ人の割合は、65歳以上の男女では5割以上であるが、64歳以下の男女では3割から4割強にとどまる。生きがいに感じることは、男性では「趣味」、女性では「子ども・孫・親などの家族・家庭」が多い。生きがいを感じる場としては、全体として「家庭」という回答が多く、64歳以下の第2号被保険者男女では「仕事・社会」という回答も多い。その一方、「どこにもない」という回答も2割前後ある。
第2に、これから先の楽しみがないという回答者の割合は35~44歳で30%台半ばであるが、年齢が高いほど低下する。代わりに、時期は不明だが楽しみがあるという回答割合が年齢とともに上昇する。また、1年以内に楽しみがある人の割合は概ね2割前後であるが、35~44歳の若い年齢階層と55~64歳の第2号被保険者では、その割合がやや多い。55~64歳の第2号被保険者は定年退職等を控え、その後の生活を楽しみに感じている可能性がある。
第3に、生活の満足度については、「健康」「時間的ゆとり」「経済的ゆとり」「精神的ゆとり」「家族の理解・愛情」「熱中できる趣味」ほか2項目では総じて満足度が高い一方、「仕事のはりあい」ほか5項目では「どちらともいえない」が多い。満足度の高い項目では、年齢が高いほど満足度は高まる傾向にある。
自由時間については、45歳以上の男女では「テレビ・ビデオ・ラジオ・新聞」、35~44歳の男性では「ひとりで趣味・スポーツ・学習など」、35~44歳の女性では「インターネット・SNS」に使うという回答が多い。なお、35~44歳の第2号被保険者の女性は、その34.3%が「自由時間が不十分である」と感じている。
経済的ゆとりに関連して、まず、現在の暮らし向きについては4~5割が「普通」と回答しているものの、「少し苦しい」「とても苦しい」が「少し楽だ」「とても楽だ」を上回り、年齢が若いほど、その傾向が顕著である。5年前と比べると、「変わらない」が5~6割、「暮らし向きが悪化している」のは2~3割、残り1~2割は暮らし向きが改善している。また、自由に使えるお金については、概して「旅行・レジャー」「外食」「衣服・服飾品」に使うことが多い。年齢が高まるほど「旅行・レジャー」「友人・知人・恋人との交流」「家族との交流」に多くのお金を費やす傾向がある。
働く目的については、大多数が「収入を得ること」と回答している。次いで「人との関わりや社会との接点をもつこと」という回答も多い。なお、仕事のはりあいへの満足度とは異なり、仕事の満足度に関しては総じて「やや満足している」という回答が多く見られた。ただし、54歳以下の第2号被保険者の男性の場合、「どちらともいえない」という回答が最多であった。
家族の理解・愛情に関連して、まず、配偶者・パートナーとの関係は概ね良好となっている。ただし、54歳以下の第2号被保険者の女性は家事負担への不満が比較的強い。男女とも女性の家事分担割合が大きいと考えているものの、具体的な分担割合の認識にはギャップが存在し、自身の分担割合を大きく評価している可能性がある。また、18歳以上の非同居の子どもについて、そのような子どものいる者の過半数は年1、2回以上の交流があり、6~7割前後は回答者の自宅から「ふだんの交通手段で1時間以上」の場所に子どもが居住しているが、回答者の年齢が高いほど居住場所が近づく傾向が見られた。
仕事の満足度と配偶者・パートナーとの関係については、新型コロナウイルス流行による影響も調べたが、双方とも「変わらない」という回答が大多数であった。ただし、配偶者・パートナーとの関係については、相手のポジティブな面を従来より強く意識する人がいた一方、家事負担への不満をより一層強く意識するようになった人もいる。また、仕事の満足度については、賃金の満足度が低下したものの、休暇の取りやすさや家庭と仕事の両立の満足度が上昇したという回答がやや多く見られた。
第4に、退職後の生活については、第2号被保険者の男女とも本人の意向として4割前後が現職退職後も可能であれば仕事を継続したいと考えている。しかしながら配偶者・パートナーに対しては、男性の概ね5割前後、女性の6~7割前後が現職退職後に就労を望んでいる。55~64歳の4割前後は、生活設計について配偶者・パートナーとまったく話し合っていない。