年報政治学
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〔公募論文〕
多元主義からイデオロギー対立へ
―大嶽秀夫の政治学とその変容―
酒井 大輔
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2016 年 67 巻 1 号 p. 1_185-1_207

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抄録

大嶽秀夫の政治学の特徴について, 従来の日本政治学史研究では, ①多元主義, ②実証主義的・自然科学的な方法, ③戦後政治学と大きく相違するもの, として理解されてきた。また, 彼の方法の時間的変化を捉えていないなど, 一面的であった。しかし1980年代以降の大嶽の変化は, ①~③のイメージの再考を迫るものである。本稿は, 彼の80年代以降の実証研究の内容にも立ち入って, 彼の方法や理論枠組の変化を検証する。大嶽は既に1970年代当初から, 影響力の遮蔽性やパースペクティブの概念により, 多元主義の弱点の克服を試みていた。そして80年代には, イデオロギー対立の枠組により, 構造的対立や政治潮流のサイクルをその分析の中心とした。こうした変化は, 多元主義の枠組からの移行であるとともに, 政策過程分析に思想史的方法を導入するなど, 戦後政治学の方法を継承するものであった。

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© 2016 日本政治学会
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