年報政治学
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《特集》
戦後の日本は主権を回復したか
―「独立の実質化」 の問題の視点から
中島 琢磨
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2019 年 70 巻 1 号 p. 1_137-1_158

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抄録

日本は1952年に念願の主権回復を果たしたが、その後も政府・与党内では独立の実質化が重要な外交テーマとなった。本稿では安保改定と沖縄返還の二大交渉に着目し、これらに向けた日本政府の取り組みのなかで浮上した、核兵器の持ち込み問題に関する複数のフォーミュラの作成経緯と内容を検討する。そこから、独立の実質化をめざした戦後日本外交の取り組みの一斑を示したい。

 安保改定交渉と沖縄返還交渉では、①占領に由来する米国との不平等な関係を是正する国権回復の問題と、②冷戦下の米国の軍事活動に対する日本の協力のあり方とが同時に争点化し、かつそれらが複雑に関係し合っていた。とくに②の問題に関して米国側には、日本での核兵器の貯蔵および一時持ち込み、ならびに在日米軍の外国への出撃を自由に行いたいという本音があった。日本政府はこうした米国の本音を見据えつつ、複数のフォーミュラを検討し、高度な政治判断を重ねていたのである。本稿では、新たに公開された外交文書や口述記録も踏まえながら、核のフォーミュラの経緯を検討する。そのうえで、「独立の実態化」 という問題が未完の問いとして沖縄返還後も残った可能性を指摘する。

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