年報政治学
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《特集》
及び腰の介入と主権
―オバマ政権期のリビア紛争とシリア紛争への対応を事例として
五十嵐 元道
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キーワード: 主権, 介入, アメリカ
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2019 年 70 巻 1 号 p. 1_76-1_95

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抄録

本稿は、主権概念を手掛かりに、国際社会における近年の介入の在り方について分析する。とりわけ、2010年代のリビア紛争とシリア紛争を事例として、オバマ政権期のアメリカによる介入政策を中心に検討する。リビアとシリアへの介入は、いかなる主権領域での、いかなる介入だったのか。本稿は、この時期のアメリカの介入政策が以下のような特徴を備えていたことを明らかにする。この介入政策は、 (1) 反政府勢力が結集し一体化するよう促し、 (2) 国際的な政治的承認を与えて段階的に外的主権を移行させ、 (3) 最終的に反政府勢力が現政権を倒し、新しい安定した統一政府 (国内主権) を樹立するよう助力するものである。本稿はこの政策をその特徴から 「及び腰の介入」 (reluctant intervention) と呼ぶが、これは現地勢力 (エージェンシー) の特質にその成否を依存するものだった。リビアとシリアの事例は、アフガニスタン戦争とイラク戦争後の世界で、欧米諸国が選択可能な介入政策の限界を示唆している。以下では、介入と主権についての先行研究を概観し (第1節) 、主権概念をもとにリビアとシリアにおける介入の特徴を明らかにする (第2節、第3節)。そして、最後に結論と示唆について論じる。

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© 2019 日本政治学会
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