年報政治学
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《公募論文》
ベルギー地域主義政党の政策的硬直
―ウェッジ・イシュー戦略の帰結
宮内 悠輔
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2020 年 71 巻 2 号 p. 2_145-2_167

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抄録

欧米の先進デモクラシーにおいては、特定地域の利益擁護を目的とする地域主義政党が数多く活動し、ときに既成政党に迫る支持を集める。しかし、地域主義政党間で競合が起きた際の政党の政策変容については、十分に検討されてきたとは言い難い。本稿では、ベルギーの地域主義政党「ヴォルクスユニ」 (VU) を事例にとり、政党機関紙 『われわれ―フランデレン・ナショナル週刊新聞』 を用いて分析を実施した。この際、他党の政策方針を分裂させる 「ウェッジ (楔) ・イシュー」 の概念を手掛かりとした。その結果、地域主義政党 「フラームス・ブロック」 (VB) が仕掛けた排外主義というウェッジ・イシューによって、VUの政策の一貫性が動揺したことがうかがえた。VUは全面的に排外主義に転じることはなかったものの、強硬な移民・外国人政策を完全に拒絶することもできず、時折VBに近い立場を示唆することがあった。ウェッジ・イシューにあたらない領域的要求ではVUの政策が一貫していたことも、VUの移民・外国人政策における揺らぎを示す証左である。以上から、地域主義政党間の競争においてウェッジ・イシュー戦略が効果を発揮したことが明らかとなった。

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