年報政治学
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《特集》
欧州における政権発足へ至る困難な道のり
―質的比較分析 (QCA) を通じた一考察
新川 匠郎
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2021 年 72 巻 1 号 p. 1_105-1_131

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抄録

欧州諸国では組閣に向けた政党間の連立交渉が常態化している。政権で得られる役職や実現できる政策を見定めるべく、交渉に各党は慎重を期すと考えられる。だが実際には組閣時間で国別の違いが見られる。なぜ組閣過程に違った特徴が生じるのか。先行研究は 「複雑性」、「不確実性」 の克服という理論枠組みに依拠して、組閣遅延の分析を行ってきた共通点がある。ただし、その実証分析では選挙後という不確実性の条件を除き、政党システムにかかわる各条件や制度的条件に関して異なる見解が示されてきた。これら分析での不一致について本論は、先行研究が各種条件を並列させて検討していたことに着目する。組閣遅延を生み出す複雑性と不確実性の条件は同質的でなく、さらに複数の結合条件を通じて影響するかもしれない。本論では 「質的比較分析 (QCA)」 を使い、こうした特徴について欧州の政権発足に至る困難な道のりの中で経験的に問うことを試みる。この結果、組閣遅延の前提 (必要条件) になる不確実性の結合条件を基に、複雑性にかかわる政党システムでの破片化と分極化が大統領の権限不在、二院制・連邦制の構造とも連動しながら組閣遅延の経路を作ることを浮き彫りにする。

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