年報政治学
Online ISSN : 1884-3921
Print ISSN : 0549-4192
ISSN-L : 0549-4192
《公募論文》
在外国民と代表民主主義
―在外選挙制度と在外国民評議会を中心に
宮井 健志
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 72 巻 2 号 p. 2_395-2_417

詳細
抄録

本稿は、在外国民に関係する政治制度に代表民主主義論の観点から接近する。主な関心は2点ある。第一に、在外国民には送出国の政策決定過程へと参加する資格があるのか。第二に、在外国民の利害は政策決定過程でどう代表されるべきか。本稿では、この二つの問いを念頭に、在外国民と代表民主主義の問題を検討する。その際、在外選挙制度だけでなく、その独自の利害を代表する試みとして 「在外国民評議会」 の事例を取り上げる。在外国民の独自の利益を代表する上では、同化代表であれ分離代表であれ、在外選挙制度は適当ではない。選挙を通じて顧慮しにくい独自の利害を代表する上では、目的限定的な諮問機能を果たす在外国民評議会制度を採用することが望ましい。通常の議会の外で民主的に運営されるこの制度は、在外選挙制度における代表性の赤字を補完し、在外国民の利害をより公正に代表する制度として推奨されうる。それだけでなく、評議会制度は、他の集団への高い応用可能性と、議会制民主主義を議会制によって補完するという理論的含意をもつ。

著者関連情報
© 2021 日本政治学会
前の記事 次の記事
feedback
Top