2021 年 72 巻 2 号 p. 2_57-2_84
本稿では、東中欧の新興民主国チェコを取り上げ、2013年以降の政党政治の変化において中心的な役割を果たした新党ANOの特徴を明らかにする。ANOは、イデオロギー的なポジションをとらず、ヴェイレンス・イシューによるアピールで支持を集めた。ANOの主張は、反腐敗にとどまらず、よりよい生活に向けた政策の合理性と効率性のアピール、世論調査の利用、政策実施能力のアピールという特徴を持つ。政党組織としては、企業家バビシュが党の設立、意思決定に大きな役割を果たし、有権者とのコミュニケーションは、外部の専門家を利用した政治的マーケティングによって実施されている。地方支部も備えた党機構は、中央集権的でトップダウンに運営され、企業的な人事の手法も採用されている。このようなビジネス企業政党としての特徴は、既成政党にも見られる選挙プロフェッショナル政党化の傾向が純粋な形で現れたものともいえるが、政党が、政党創設者の私的な目的と結びついている点で既成政党と異なる。ANOの成功は、ポジショナルな政党間競合を弱め、市民の政策の消費者としての側面を強化し、政党政治の変化をもたらした。