2024 年 75 巻 1 号 p. 1_309-1_330
近年、「権威主義」は、幅広い政治現象・政治的潮流を指す概念として多用されている。だが、権威主義の定義に関して合意があるとはいえず、「民主主義的ならざるもの」の総称として用いられているに過ぎない。
本稿では、権威主義を「当該政治社会における安定と秩序の維持を重視する理念・体制・統治」と定義する。その上で、今日権威主義と対置されているのは、民主主義ではなく自由民主主義であり、「権威主義化」「民主主義の後退」は、自由主義への反動によって起こっている現象と捉える。
その後、政治学における「権威主義」概念の変遷を辿り、「民主主義か権威主義か」という二項対立的な捉え方への疑問を呈し、自由主義と民主主義という2つのメルクマールを用いて、権威主義の位相を明らかにする。
続いて、戦間期ヨーロッパ、第二次大戦後の新興独立国、冷戦終結後という3つの時期に主に焦点を当て、「現存した権威主義」が、秩序の維持のために民主主義と自由主義のいずれを、どのような形で抑制したかを概観する。
最後に、権威主義概念の横溢に対し、体制・統治・イデオロギーとしての権威主義をより明確に再定義することを提唱する。