今村 徹会長から求められた主題,“社会が求める神経心理学”とは何かを考えるに当たっては,少なくとも現在と近未来の社会の状況を考慮する必要がある.すなわち,少子高齢化の進展(認知症者の急増や発達障害の顕在化),地域ネットワークの弱体化,医療財源の抑制,そして,障害との共生,世帯が狭小化する中での住み慣れた地域での安定した生活,などが社会の直面する課題となろう.本稿では,認知症の診療・研究領域における1)正確な早期診断に果たす神経心理学の役割,2)症状発現のメカニズムや神経基盤の解明に果たす神経心理学の役割,3)これらに裏打ちされた疾患別の介入方法の開発と対象個別の支援に果たす神経心理学の役割,4)近未来のIoTと神経心理学の協働,について私見を述べてみたい.