意味記憶の選択的障害例である意味性認知症(semantic dementia:SD)の意味記憶障害の特徴から,SDの責任病巣である側頭葉前方部(anterior temporal lobe:ATL)を多様式的な意味のハブとみなし,連合野に分散する感覚様式特異的な領域との情報交換(spoke)を通して概念が形成されるという仮説を紹介した.ATLの損傷により概念の多様性が失われたSDにおいて,言語や視覚性の意味記憶障害はもとより,固執的な常同行動を初めとするさまざまな行動を生み出す可能性について論じた.