神経心理学
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特別教育講演1
脳血管障害と失語症
―その発現機序を考える―
田川 皓一
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2021 年 37 巻 1 号 p. 10-20

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抄録

脳血管障害における失語症の発現機序を論じるときは,各臨床病型の病態生理の相違について理解しておく必要がある.脳塞栓では脳動脈灌流域に一致した梗塞巣を生じる.言語領域へと灌流する皮質枝が塞栓性に急性に閉塞したときに,各失語症の典型像が出現してくると考えている.動脈硬化性変化を基盤とするアテローム血栓性脳血栓でも種々のタイプの失語症が出現してくる.この場合,CTやMRIによる梗塞巣の周囲に,機能画像による脳血流代謝の障害部位を観察することがあり,このような病態が失語症の発現に関与している可能性がある.被殻出血は大脳基底核部を中心に血腫を形成する空間占拠性の病巣であり,血腫が大きくなると周囲に影響を与えてくる.血腫が大きくなると,周囲の言語領野にも障害を及ぼし失語症が出現してくる.

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© 2021 日本神経心理学会
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