Neurosonology:神経超音波医学
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Power Doppler Imagingによる脳血管血流量の絶対値測定の信頼性: ファントムを用いた実験的検討
党木仁加甫 更塩貝 敏之永山 和樹原 充弘斎藤 勇古幡 博
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1998 年 11 巻 4 号 p. 176-182

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抄録

近年, 卵円孔開存 (PFO) を介する右左シャントによる奇異性塞栓が, 従来原因不明とされていた脳梗塞の発症機転に関与している可能性が注目されている.卵円孔開存の診断は経胸壁心エコー図検査, 経食道心エコー図検査, および経頭蓋超音波ドプラ検査でValsalva法とコントラスト法を用いて診断される.一方, 1996年に心房中隔欠損症 (ASD) 例で特徴的な心電図所見 (II, III, aVF誘導におけるR波のノッチ, “crochetage”) が報告された.ASDとPFOは部位が似ているので, PFOに於いても心電図上の“crochetage”が見られる可能性がある.そこで, 脳血管障害もしくは一過性脳虚血発作の初回発作例1470症例のうち, 一定の診断基準を満たすPFOを有す原因不明の脳梗塞28例 (PFO群) とPFOを有さない原因不明の脳梗塞32例 (コントロール群) 間で背景因子や心電図所見を比較検討した.
PFOの診断は経胸壁カラードプラ心エコー, コントラスト経胸壁心エコー, もしくはコントラスト経食道心エコー図検査で行われた.PFO群 (45±16歳) はコントロール群 (52±10歳) より若く (p<0.05) , 合併する動脈硬化危険因子 (高血圧, 糖尿病, 高脂血症, 肥満, 喫煙) の数が少なかった (0.5±0.7v.s.1.0±0.9) .心電図上の“crochetage”はPFO群が28例中10例 (36%) , コントロール群が32例中3例 (9%) でPFO群の方が有意に多かった (p<0.05) .原因不明の脳梗塞におけるPFO陽性への心電図上のcrochetageのsensitivityは36%, specificityは91%, positive predictive valueは77%, negative predictive valueは62%であった.
これらの結果から, 著者らは心電図上の“crochetage”はsensitivityが低いのでPFO診断のスクリーニングとしては向かないが, positive predictive valueが比較的高いことから心電図上のcrochetageが見られたら, コントラスト経食道心エコー図検査やコントラスト経頭蓋超音波検査で早急に確認するべきであろうと考察している.

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© 日本脳神経超音波学会
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