1994 年 7 巻 2 号 p. 65-70
経頭蓋超音波ドプラ法 (TCD) の脳主幹動脈病変診断に対する有用性を検討する目的で, 57名のコントロール群から中大脳動脈 (MCA) の収縮期最高流速 (MCAPF) と平均流速 (MCAMF) 並びにこれらの流速の左右比 (FVR-pcak, FVR-mcan) の正常域を設定した.正常域はMCAPF: 52-116cm/s, MCAMF: 30-73cm/s, FVR-peak≦1.33, FVR-mcan≦1.37であった.その範囲を用いて血管撮影とTCDを同時に施行した一側内頸動脈閉塞症 (UIO) 15例, 一側内頸動脈高度狭窄症 (UIS) 9例, 一側中大脳動脈狭窄症 (UMS) 15例, 有意な病変無し (NF) 7例の計46例と, 脳血流SPECT検査を同時に施行した27例で各々の診断一致率を検討した.その結果, 血管撮影との対比ではUIO; 87%, UIS; 56%, UMS; 80%の一致率で全体では36/46 (78%) の一致率であった.またSPECTとの対比では25/27 (92%) の一致率であった.以上の結果から, TCDによるMCA血流情報を用いることにより, 血管形態の診断のみならず, 脳内血行動態の推定に有用であると思われた.