日本橋学館大学紀要
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中高年女性のHULA danceについて : 健康運動としての有効性の検討
小山 貴
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2002 年 1 巻 p. 3-15

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抄録

人口の高齢化が進む中で、健康維持を目的として運動を日常生活に取り入れる習慣が普及している。最近は多彩な運動に取り組む女性も多く、その中でここ数年、HULAを愛好する中高年女性が増加している。しかしエアロビックダンスと違って、フラダンスについては一般に「ハワイの観光ショウ」程度の認識が強いためか、運動生理学的な検討はほとんどなされていない。そこで、中高年女性がHULAを行ったときの生理的応答を測定し、健康運動としての有効性の検討を試みた。被験者は定期的にフラ・レッスンを受けている33〜68歳の女性15名である。HULAは常に膝を曲げた状態を基本姿勢とし、これを保持してステップを行うことによって独特の腰のスイングが可能となる。各種ステップにおける筋電図により、初心者と熟達者では顕著な差が認められた。したがって、跳躍動作のないフラ・レッスンを継続することは、日常生活では衰えがちの内側広筋を含めて、下肢の筋肉の有効・安全なトレーニングになると考えられる。テンポの遅い(♪=90)曲の場合も初心者と熟達者では体重当たりの酸素摂取量に有意な差が認められた。初心者では屈膝が少なく、おもに上肢だけの運動になるため酸素摂取量が少ないものと思われる。ダンス中の心拍数は♪=90〜110の2曲とも初心者では60〜65%HRmaxの範囲にあり、熟達者が動きの大きいソロを踊った場合は75%HRmaxに達した。運動強度は高齢初心者の場合、曲のテンポにかかわらず3〜4METSであるのに対し、熟達者では4〜7METSであった。レッスンでは各人の年齢・体力・技能程度に応じた配慮がなされるため、それぞれ適度な強度となっている。ダンス中の全消費エネルギーは♪=90の[PUA MANA]で、初心者は1.6〜3.8kcal/m、熟達者では2.4〜5.6kcal/mであった。各人の技能と曲の種類、さらに振り付けによって幅があるものの、通常の歩行〜速歩と同程度のエネルギー量は消費できるものと認められる。ダンス直後の血圧は30分のレッスン直後においても安静時から大きな上昇は認められなかった。一般に、中高年者には歩行が推奨されているが、そのほかに週1〜2回の楽しい要素を含むフラのレッスンを受けることは、気分転換効果ばかりでなく、下肢の筋力や心機能の維持改善、さらに消費エネルギーを増加させるための適度な健康トレーニング効果が期待できる。

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© 2002 学校法人日本橋女学館 日本橋学館大学
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