日本橋学館大学紀要
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教育臨床におけるコミュニケーション分析の試みII : 教師の行動が子どもの行動に及ぼす影響
長澤 泰子太田 真紀
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2004 年 3 巻 p. 3-13

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抄録

ことばの教室における教師と子どもの相互交渉を分析した先行研究において,われわれは,つらい経験を原因とする吃音への感情を理解するために,顔の向きや表情あるいは沈黙のような子どもの非言語的表現を受けとめることの重要性を報告した。本研究は臨床における教師のより好ましい行動を明らかにするために,引き続き,別の2人のコミュニケーション分析を行なう。教師と子どもが話し合う相互交渉2セッションをVTRに録画し,子どもと教師の発話,体・顔の向き,表情,視線,その他の行動を指標として分析を行った。教師は40代女性,子どもは吃音のある3年男児だった。2人は子どもの吃音にかかわる経験について話し合った。そのとき,教師はタイトル「どもってもいいんだよね」という吃音に関する教材を用いた。1週目の話し合いにおいて,絵本に関する子どものコメントの後,教師は吃音をからかわれたことがあるかを質問した。このとき,教師は子どもを見ていたが,子どもに体を向けてはいなかった。教師は子どもの返事を確認することなく,いじめに関する新たな質問をした。子どもは教師の質問に答えようとしたが,体や顔を教師に向けずに,今はいじめられていないと繰り返し述べた。2週目の話し合いにおいて,教師と子どもの相互交渉は改善されていた。教師は体と顔を子どもに向けながら話をしていた。子どもは,今はいじめられていないと繰り返すことはなかった。このとき,子どもは体と顔を教師に向けていた。教師は子どものつらさを思いやるような声で,いじめ経験の詳細について確認し,質問していった。知見は以下の通りである。(1)教師が子どもの気持ちを受け止めるとき,子どもは自分の経験や気持ちを語る。(2)教師の気持ちは,体や声の調子などの非言語的行動に表れる。(3)教師の行動は子どもの行動によって影響され,子どもの行動は教師の行動によって影響されている。

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© 2004 学校法人日本橋女学館 日本橋学館大学
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