1986 年 35 巻 7 号 p. 37-47
中学校一年生を対象に「鹿踊りのはじまり」を実践した。方言のふんだんに出てくる作品だが、それがかえって作品世界に生徒をさそい込んでいった。そして生徒は、主人公の嘉十が鹿と同化し、その言葉を理解することができたものの、結局自然からは拒絶される存在であったという「読み」を展開した。鹿の視点に立って日常生活から失われてしまった感覚を体験するとともに、嘉十の疎外感に共感していったのである。この実践は「イメージの世界に遊ぶ」という虚構の体験の成立をめざしたものである。