日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
「蓼喰ふ虫」の頃 : 「La Femme」の消失
宮内 淳子
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 36 巻 6 号 p. 26-36

詳細
抄録

「蓼喰ふ虫」が谷崎文学の転機をなす作品であることは定説となっている。小論ではその転機をなしたものとして、それまで谷崎がとらわれてきた「永遠女性」の消失を据えた。この至上価値が失われた時、谷崎は閉ざされた価値体系から開放され、改めて自ら「永遠女性」の語り手になる自覚を持った。そこに谷崎の古典回帰の時代が生じて来る。「蓼喰ふ虫」に描かれた三人の女性の「うそ」と「ほんたう」を比較しながら、この時期の谷崎の変化について考える。

著者関連情報
© 1987 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top