日本文学
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浮世草子における作者と代作者 : 多田南嶺論の(不)可能性(<小特集><作者>・<作家>)
高橋 明彦
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1991 年 40 巻 1 号 p. 25-35

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抄録

作者は、作品の原因であり生成の場でありその所有者である、といった特徴を持つだろう。その特徴は、読解のために要請された機能であるにも拘らず、逆に読解の基盤として実体化される。一般的な作家論は、これを素直に受け入れ、その現実に安住感を持ち、作品理解を作者の名の下に統合する。しかし《多田南嶺の浮世草子》は、「八文字屋浮世草子」と「多田南嶺」との間に微妙な緊張関係を強いる。が、作者を実体として捕捉しえない多田南嶺という存在こそ、その時我々の前に純粋な作家論の対象として幻出する。

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© 1991 日本文学協会
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