日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
戦争と証言 : 島崎藤村『仏蘭西だより』
中山 弘明
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 46 巻 9 号 p. 22-33

詳細
抄録

本稿は従来の如く「島崎藤村とフランス」のテーマのもと、「むこう(フランス)側」から比較文学的に対象を論じるのではなく、むしろそうした方法を根本的に批判しつつ、あくまで「こちら(日本)側」からの視点に拘ってみた。具体的には在仏時代の藤村の『仏蘭西だより』を、第一次大戦の現場からの<証言>として、同時代の日本の新聞報道と交差させつつ論じた。それによって海の彼方で生じたこの<戦争>が、新聞の中でどのようなイメージとして組み立てられ、それに藤村の言説はどう関わったのかが見えてくるだろう。また同時に、この未曾有の大戦の中で<証言>という言語行為の果たした役割についても考察してみた。それはさながら「証言の時代」として、発話の臨場性とリアリティーを求め続ける現代への、一つの問いかけともなり得るのではないか。

著者関連情報
© 1997 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top