日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
文学研究とカルチュラル・スタディーズ : <文化研究>とは何の謂いか(提言)
中川 成美
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 50 巻 11 号 p. 52-63

詳細
抄録

カルチュラル・スタディーズが真に衝撃的だったのは、既存の学問的な思考分類がそれ自身のためにあったのだということに気付かせた点にあるだろう。ハイ・カルチュアーを構成してきた知識人や大学人によって排除・疎外されてきた大衆文化の見直し作業は、<制度>として機能してきたアカデミックな領域そのものへの痛烈な自己批判として出発した。それは「方法」ではなく、思考の転回を期するものであったはずだ。しかし、文学研究の領域で「推進」されようとしている<文化研究>と呼称されるものは、果たしてそうした起点を持ちえていたであろうか。文学におけるカルチュラル・スタディーズとは何を目的とするものなのか、また文学とカルチュラル・スタディーズを繋ぐものは何なのか、本稿で考えたい。

著者関連情報
© 2001 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top