日本文学
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見出された「心境小説」 : 志賀直哉「焚火」
古川 裕佳
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2002 年 51 巻 6 号 p. 29-39

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抄録

志賀直哉「焚火」は私・心境小説論争と芥川・谷崎論争の二つに巻き込まれた作品である。本稿では文学史的な問題性と作品の方法意識の関係を考察する。「大きな蛇」がいるといった<話>への芥川の批判を手がかりにして、「大蛇」や「大入道」とは異なる「不思議」な<話>を「皆」が探り出してゆく過程を描いたものとして「焚火」を読み直す。語り手も<話>の選別・挿入・再構成を行っており、聞くことを通して「自分」の中に小説が生れる過程が描かれていることが分かる。志賀と芥川は<話>の技術への関心を共有していたのである。

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© 2002 日本文学協会
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