日本文学
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逍遥のデモクラシー : 世界戦争の〈代用物〉
中山 弘明
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2003 年 52 巻 2 号 p. 56-67

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抄録

本稿は、第一次大戦後〈文化〉が〈戦争〉とリンクし、大衆を組織的に動員する方法として坪内逍遥が模索していたページェント運動について検討したものである。当時、特にアメリカでは、野外劇をはじめとする市民参加の大規模なイベントが様々な形で試みられていた。ここでは逍遥の演劇観のベースになった海外の文献の中から、アメリカの劇作家「パーシー・マカイ」(Percy Mackaye)の『戦争の代用物』(A Substitute for War 1915)、と「G・T・W・パトリック」(G・T・W・Patrick)の『弛緩の心理』(The Psychology of Relaxation 1916)という二冊の原書を採り上げる。そしてページェントが世界戦争の「代用物」として、大衆を動員する新たな娯楽の実験であった点に言及し、逍遥の「デモクラシー」という用語に対する認識のあり方の一端を解明したものである。

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© 2003 日本文学協会
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